こんにちは。
スタジアムデイズ、運営者の「KEN」です。
NBAの試合を見ていると、次々と決まる3ポイントシュートに興奮を覚えることはありませんか。
特にカリーやトンプソンといった名手がゾーンに入ったとき、一体どこまで記録が伸びるのかと期待してしまいますよね。
コートのどこからでもリングを射抜く彼らの姿は、まるでビデオゲームを見ているかのような錯覚さえ覚えます。
NBAの3ポイント記録において1試合で最も多く成功させたのは誰なのか、そして歴代の個人ランキングやチームごとの記録はどうなっているのか、詳しく知りたいという方も多いはずです。
また、世界最高峰の舞台で戦う日本人選手たちが、どのような数字を残しているのかも気になるところでしょう。
八村塁選手や渡邊雄太選手、そして新世代の選手たちが刻む一投一投は、日本のバスケットボール史にとっても重要な意味を持っています。
この記事では、レギュラーシーズンやプレーオフにおける個人の最多成功数から、チーム全体での驚異的な記録、さらには日本人選手たちが刻んだ足跡まで、現代バスケを象徴する3ポイントの記録を網羅的に解説します。
2026年現在の最新情報に基づき、数字の裏にあるドラマや戦術的背景まで深掘りしていきましょう。
- 歴代個人最多はクレイ・トンプソンが記録した14本
- チーム1試合最多はセルティックスとバックスの29本
- プレーオフや両チーム合計で生まれた驚愕の記録
- 八村塁や渡邊雄太ら日本人選手が残した記録と成果
現代NBAにおける3ポイントシュートの革命的地位とその背景
1979年にNBAへ導入された3ポイントシュートは、当初は試合の「付け足し」に過ぎない要素でした。
当時のコーチたちは「確実性の低いシュート」として敬遠し、試合終盤の逆転狙い以外ではほとんど使われない飛び道具という扱いだったのです。
しかし、40年以上の歳月を経て、この長距離砲はバスケットボールの本質そのものを書き換えるに至りました。
現代のNBAにおいて、1試合の3ポイントシュート成功数は単なるスコアの一部ではなく、そのチームの戦術的成熟度と攻撃の爆発力を象徴する最重要指標となっています。
特に2010年代以降、ゴールデンステイト・ウォリアーズの台頭とともに加速した「3ポイント革命」は、選手の育成、ゲームのペース、そして勝利の方程式を根本から変容させました。
かつてはセンターがゴール下で押し込むのが常識でしたが、今や210cmを超える大男たちが軽やかに3ポイントを沈める時代です。

現在、1試合における個人最多成功記録は14本、チーム記録は29本という驚異的な領域に達しています。
これらの数字は、かつてのレジェンドたちが想像もできなかった頻度でシュートが放たれ、かつ極めて高い精度で沈められている現実を物語っています。
本章では、レギュラーシーズンにおける記録に焦点を当て、その進化の過程を紐解いていきます。
レギュラーシーズンにおける個人1試合最多成功記録の解析
レギュラーシーズンにおける1試合最多成功記録は、現代NBAのオフェンスの進化を最も直接的に反映している指標です。
現在、この頂点に君臨するのはクレイ・トンプソンですが、その背後にはステフィン・カリーを筆頭とする驚異的なシューターたちの群像劇が存在します。
ランキング上位の顔ぶれを見ると、ほとんどが2015年以降に記録されたものであることに気づくでしょう。
以下に、歴代のレギュラーシーズンにおける個人最多成功数の上位記録を、試投数や成功率、達成日とともに整理しました。
| 順位 | 選手名 | 成功数 | 試投数 | 成功率 | 達成日 | 対戦相手 | 所属チーム |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | クレイ・トンプソン | 14本 | 24 | 58.3% | 2018/10/29 | シカゴ・ブルズ | ウォリアーズ |
| 2 | ステフィン・カリー | 13本 | 17 | 76.5% | 2016/11/07 | ペリカンズ | ウォリアーズ |
| 2 | ザック・ラビーン | 13本 | 17 | 76.5% | 2019/11/23 | ホーネッツ | ブルズ |
| 2 | デイミアン・リラード | 13本 | 22 | 59.1% | 2023/02/26 | ロケッツ | ブレイザーズ |
| 5 | コービー・ブライアント | 12本 | 18 | 66.7% | 2003/01/07 | スーパーソニックス | レイカーズ |
| 5 | ドニエル・マーシャル | 12本 | 19 | 63.2% | 2005/03/13 | 76ers | ラプターズ |
| 5 | ステフィン・カリー | 12本 | 16 | 75.0% | 2016/02/27 | サンダー | ウォリアーズ |
| 5 | デイミアン・リラード | 12本 | 17 | 70.6% | 2021/06/01 | ナゲッツ | ブレイザーズ |
| 5 | クレイ・トンプソン | 12本 | 16 | 75.0% | 2023/02/06 | サンダー | ウォリアーズ |
| 5 | クレイ・トンプソン | 12本 | 17 | 70.6% | 2023/02/24 | ロケッツ | ウォリアーズ |
| 5 | キーガン・マレー | 12本 | 15 | 80.0% | 2023/12/16 | ジャズ | キングス |
| 5 | ステフィン・カリー | 12本 | 19 | 63.2% | 2025/02/27 | マジック | ウォリアーズ |
上位を独占しているのは、やはり近年の選手たちです。特にステフィン・カリーはキャリアを通じて「1試合10本以上」を25回以上も達成しており、爆発力と継続性の両面で他を圧倒しています。また、2003年にコービー・ブライアントが記録した12本は、まだ3ポイントが主流ではなかった時代の記録として異彩を放っています。
クレイ・トンプソンによる14本成功の衝撃とその背景
2018年10月29日、クレイ・トンプソンがシカゴ・ブルズを相手に樹立した14本という記録は、単なる数字以上の戦術的意義を持っています。
この試合、トンプソンは開幕からシュートスランプに陥っており、鬱憤を晴らすかのようなパフォーマンスを見せました。
特筆すべきは、トンプソンがこの記録をわずか26分33秒という極めて短い出場時間で達成した点です。
彼は第3クォーター終了時点でベンチに下がり、第4クォーターには一度もコートに立っていません。
当時のウォリアーズはあまりにも強すぎたため、点差が開きすぎて主力を温存せざるを得なかったのです。
もし彼がフルタイムで出場していれば、その記録は15本、16本、あるいは20本という未知の領域に達していた可能性が高いと言われています。
この試合でトンプソンは前半だけで10本の3ポイントを沈めており、これもハーフにおけるNBA最多記録となっています。
トンプソンのシュートの特異性は、ドリブルをほとんど突かずにボールを受けた瞬間に放つ「キャッチ&シュート」の極致にあることです。
ステフィン・カリーやケビン・デュラントといった強力なチームメイトが引き寄せるディフェンスの隙を見逃さず、機械のような正確さでリングを射抜く姿は、まさに「スプラッシュ・ブラザーズ」の真骨頂でした。(出典:NBA.com『All-Time Regular Season Records』)

ステフィン・カリー:記録の絶対的支配者
クレイ・トンプソンが「爆発力」の象徴なら、ステフィン・カリーは「継続性と支配力」の象徴です。
カリーは13本成功を記録しているだけでなく、キャリアを通じて「1試合10本以上の成功」という快挙を誰よりも頻繁に達成しています。
その回数は25回以上に及び、これはクレイ・トンプソンの9回やデイミアン・リラードの5回を圧倒的に上回る数字です。
カリーが2016年11月7日にニューオーリンズ・ペリカンズ戦で13本を記録した際、その成功率は76.5%(17本中13本)という異常な高水準でした。
興味深いことに、カリーはこの記録を樹立する直前のロサンゼルス・レイカーズ戦で、157試合連続で続いていた3ポイント成功記録が途絶えていた(0本成功)のです。
その直後の試合で当時のNBA記録を塗り替える13本を沈めたことは、彼の精神的な強靭さと、一度火がついた際の手の付けられなさを象徴しています。
また、2025年2月27日のマジック戦でも12本を記録するなど、30代後半に差し掛かってもそのシュート力は衰えることを知りません。
カリーの存在は、ディフェンスをハーフコートラインまで広げさせ、バスケットボールという競技のエリア概念を永遠に変えてしまいました。

現代のスコアラーたちによる追撃
カリーとトンプソンだけでなく、現代のNBAには彼らの背中を追う優れたシューターたちが数多く存在します。
ザック・ラビーンやデイミアン・リラードも13本成功という記録でカリーに並んでいます。
ラビーンは2019年のホーネッツ戦で、試合終了間際の逆転シュートを含む劇的な展開の中で13本を沈めました。
彼の身体能力とシュート力の融合は、新時代のスラッシャーの形を示しています。
一方、リラードは2023年のロケッツ戦で71得点を挙げる歴史的パフォーマンスの一環として13本の3ポイントを成功させており、現代の大量得点が長距離シュートに依存していることを示しています。
また、新星の台頭も目覚ましいものがあります。
サクラメント・キングスのキーガン・マレーは、2023年12月にルーキー契約期間中ながら12本の3ポイントを成功させました。
その際の成功率は80%(15本中12本)という驚異的な効率性でした。
これは、ウォリアーズが築き上げた3ポイント重視の戦術が、リーグ全体の若い世代にまで完全に浸透し、開花していることの証左です。
NBAプレーオフにおける1試合最多成功記録
レギュラーシーズンとは異なり、プレーオフでは対戦相手の研究(スカウティング)が徹底され、守備の強度が極限まで高まります。
シリーズを通して同じ相手と戦うため、手の内を知り尽くされた状態で3ポイントシュートを量産することは、技術以上に強靭なメンタリティを要求されます。
ここでは、そんな過酷な環境下で生まれた伝説的な記録を紹介します。

個人1試合成功数ランキング(プレーオフ)
プレーオフにおける1試合10本以上の成功は、歴史上わずか数回しか達成されていない極めて希少な記録です。
一度の敗北がシーズン終了に直結するプレッシャーの中で、リングを通し続けることができる選手は限られています。
| 順位 | 選手名 | 成功数 | 達成日 | 対戦相手 | 所属チーム | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | デイミアン・リラード | 12本 | 2021/06/01 | デンバー・ナゲッツ | ブレイザーズ | ダブルOTでの記録 |
| 2 | クレイ・トンプソン | 11本 | 2016/05/28 | サンダー | ウォリアーズ | 西地区決勝第6戦 |
| 3 | デイミアン・リラード | 10本 | 2019/04/23 | サンダー | ブレイザーズ | シリーズ決着のブザービーター |
| 4 | バディ・ヒールド | 9本 | 2025/05/04 | ロケッツ | ウォリアーズ | |
| 4 | ゲイリー・トレントJr. | 9本 | 2025/04/25 | バックス | バックス | |
| 4 | ドンテ・ディビンチェンゾ | 9本 | 2024/05/19 | ペイサーズ | ニックス | |
| 4 | ドノバン・ミッチェル | 9本 | 2021/06/18 | クリッパーズ | ジャズ | |
| 4 | ジャマル・マレー | 9本 | 2020/08/30 | ジャズ | ナゲッツ | バブルでの激闘 |
| 4 | ステフィン・カリー | 9本 | 2018/06/03 | キャバリアーズ | ウォリアーズ | NBAファイナル記録 |
デイミアン・リラードの「ゾーン」
2021年6月1日、デンバー・ナゲッツを相手にリラードが放った12本の3ポイントシュートは、プレーオフ史において最も壮絶なパフォーマンスの一つとして語り継がれています。
彼はこの試合で55得点を挙げ、勝負所の第4クォーター終了間際やオーバータイムにおいて、信じられないような距離からの同点シュートを次々と沈めました。
特に圧巻だったのは、ディフェンスが徹底的に彼をマークしているにもかかわらず、わずかなズレを見つけてはステップバックで3ポイントをねじ込んでいく姿でした。
たとえチームがダブルオーバータイムの末に敗北したとしても、このリラードの記録は、一人のプレーヤーが長距離シュートによって試合をどこまで支配できるかの限界値を示したものであり、「デイム・タイム」の恐ろしさを世界に知らしめました。
「ゲーム6・クレイ」の伝説
記録の本数ではリラードに譲りますが、試合の重要度とドラマ性において、クレイ・トンプソンが2016年のウェスタン・カンファレンス決勝第6戦で記録した11本を超えるものは存在しないかもしれません。
当時73勝というNBA最高勝率を記録したウォリアーズは、ケビン・デュラント率いるサンダーに1勝3敗と追い込まれていました。
絶体絶命の敵地オクラホマシティで、チーム全体が重圧に押しつぶされそうになる中、トンプソンだけが淡々と、しかし情熱的にシュートを沈め続けました。
彼が決めた11本の3ポイントは、どれもタフな状況からのものであり、対戦相手のサンダーだけでなく、会場全体の空気を変容させました。
試合後、ウォリアーズのオーナーであるジョー・レイコブが通路でトンプソンに土下座をして感謝を示したという逸話が残るほど、このパフォーマンスは王朝を救った「神の領域」のプレーだったのです。
チームによる1試合最多成功記録の分析
個人の爆発がその選手特有の能力(タレント)に依存するのに対し、チーム全体の成功数はそのチームの戦術的練度と、全員でスペースを作り出すシステムの勝利と言えます。
現代NBAでは、特定のエースだけでなく、ロールプレイヤーを含めた全員が3ポイントを打つことが求められます。
チーム1試合最多成功ランキング
現在、1試合で29本の3ポイントシュートを成功させたミルウォーキー・バックスとボストン・セルティックスがリーグの頂点に並んでいます。
これらの記録は、相手ディフェンスを完全に崩壊させた結果生まれたものです。

| 順位 | チーム名 | 成功数 | 達成日 | 対戦相手 | 試投数 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ミルウォーキー・バックス | 29本 | 2020/12/29 | マイアミ・ヒート | 51 | 成功率56.9% |
| 1 | ボストン・セルティックス | 29本 | 2024/10/22 | ニューヨーク・ニックス | 61 | 開幕戦でのタイ記録 |
| 3 | ヒューストン・ロケッツ | 28本 | 2021/02/02 | サンダー | 52 | |
| 3 | ユタ・ジャズ | 28本 | 2021/02/22 | ホーネッツ | 55 | |
| 5 | ヒューストン・ロケッツ | 27本 | 2019/04/07 | サンズ | 57 | |
| 5 | ブルックリン・ネッツ | 27本 | 2021/02/15 | キングス | 47 | |
| 5 | ウォリアーズ | 27本 | 2021/05/08 | サンダー | 54 | |
| 5 | ユタ・ジャズ | 27本 | 2021/12/03 | セルティックス | 51 | |
| 5 | ボストン・セルティックス | 27本 | 2022/11/05 | ニックス | 51 | |
| 5 | ウォリアーズ | 27本 | 2023/04/09 | ブレイザーズ | 49 |
セルティックスと「マズーラ・ボール」の完成
2024-25シーズンの開幕戦でボストン・セルティックスが記録した29本成功は、現代バスケットボールの究極の形を示しています。
ジョー・マズーラ監督が標榜する戦術、通称「マズーラ・ボール」は、従来のポジション概念を排し、コート上の5人全員が3ポイントを打てる状況(5アウト)を維持し続けることにあります。
この試合でセルティックスは61本の3ポイントを試投しており、これは攻撃回数の大部分を長距離シュートに充てていることを意味します。
ジェイソン・テイタムやジェイレン・ブラウンといったエースだけでなく、デリック・ホワイトやドリュー・ホリデー、さらにはセンターのアル・ホーフォードまでが隙あればシュートを放つため、ディフェンスは的を絞ることができません。
29本成功という数字は、単なる偶然ではなく、確率論に基づいて最も効率的なシュートを選択し続けた「数学的な勝利」の結果なのです。
両チーム合計での成功記録:現代の空中戦
一方的な展開ではなく、両チームが激しく打ち合った結果生まれた記録もあります。
2024年12月15日、ゴールデンステイト・ウォリアーズ対ダラス・マーベリックスの一戦で、両チーム合わせて48本の3ポイントシュートが成功するというNBA新記録が誕生しました。
- ウォリアーズ: 27本成功(54投中)
- マーベリックス: 21本成功(41投中)
この試合は、長年ウォリアーズの象徴だったクレイ・トンプソンがマーベリックスに移籍した後の対戦であり、ウォリアーズ側でステフィン・カリーが7本、マーベリックス側ではトンプソンが7本を沈めるという、新旧の「スプラッシュ・ブラザーズ」による壮絶な撃ち合いが展開されました。
観客にとっては、瞬きする暇もないほどの得点の応酬が見られる、最高にエキサイティングな時代と言えるでしょう。

特殊な条件下での3ポイント記録
試合全体を通じた記録以外にも、特定の時間帯における爆発や、ミスのない完璧なパフォーマンスに関する記録が、選手の「熱狂(オン・ファイア)」の状態を物語っています。
ここでは、「瞬間最大風速」とも言える記録を見ていきましょう。

クォーターおよびハーフにおける爆発
クレイ・トンプソンは、12分間という短い1クォーターの中で驚異的な数字を残しています。2015年1月23日のキングス戦第3クォーターにおいて、彼は9本の3ポイントを成功させました。
特筆すべきは、このクォーターで彼が放ったシュート(2ポイント含む)13本すべてを成功させ、NBA記録となる1クォーター37得点を挙げたことです。
チームメイトさえも頭を抱えて驚くほどの「ゾーン」に入った状態でした。
また、ハーフ(前半または後半の24分間)における最多記録は10本です。
パーソンズはこの試合の後半だけで10本の3ポイントを沈めるという、予測不能な爆発を見せました。
こうした記録は、一度リズムに乗ったシューターを止めることがいかに不可能に近いかを示しています。
無失ミス(100%成功)の記録
「1本も外さずにどれだけ多くのシュートを沈めたか」という精度に関する記録も重要です。
現在のNBA記録は9本中9本成功(100%)で、ベン・ゴードン(元ブルズ他)、ラトレル・スプリーウェル(元ニックス他)、そしてジェイレン・ブランソン(ニックス)の3名がこの記録を保持しています。
特にジェイレン・ブランソンは2023年のサンズ戦でこの記録を達成しましたが、彼は身長が高いわけでもなく、純粋なシュータータイプでもありません。
乱発するのではなく、確実に仕留めるスナイパーのような能力もまた、称賛されるべき記録です。
日本人NBA選手の3ポイント記録と貢献
日本バスケットボール界にとって、世界最高峰のNBAで日本人選手が3ポイントシュートを通じて存在感を示すことは、極めて大きな意義を持ちます。
体格差のあるNBAにおいて、シュート力は生存戦略の要だからです。八村塁、渡邊雄太、そして新世代の河村勇輝や富永啓生らが刻んだ記録を精査します。
八村塁:プレーオフ歴代1位の精度とキャリアハイ
ロサンゼルス・レイカーズの主軸として活躍する八村塁選手は、キャリアを通じて「3ポイントが打てるビッグマン」としての評価を確固たるものにしました。
彼の1試合最多成功数は7本(2024年3月27日、グリズリーズ戦)です。
この試合で八村選手は32得点、10リバウンドというダブルダブルの活躍を見せるとともに、7本の3ポイントを沈めてチームを5連勝に導きました。
また、キャリアハイの得点を記録した2024年2月14日のジャズ戦では、6本の3ポイントを沈めて自己最高の36得点を記録しています。
八村選手の凄さは、レギュラーシーズンだけでなく大舞台でも発揮される点です。
2023年のプレーオフでは驚異的な成功率を記録し、通算25本以上の成功を条件としたランキングで、一時「NBAプレーオフ歴代1位の3ポイント成功率(51.9%)」を保持していました。
これはセス・カリーやレイ・アレンといった伝説的なシューターたちの記録を上回るものであり、彼の勝負強さを証明しています。
八村選手の成功は、レイカーズのアシスタントコーチであるフィル・ハンディらとのトレーニングにより、シュートフォームを徹底的に改良した結果です。

渡邊雄太:一時期世界1位となったシューティング
渡邊雄太選手は、その卓越した守備力に加え、3ポイントシュートでNBAの頂点に迫る数字を残しました。
彼の1試合最多成功数はネッツ時代に記録した5本です。
これは当時の日本人選手としての最多記録でもありました。
特筆すべきは、2022-23シーズンの序盤、渡邊選手が3ポイント成功率で一時NBA全体1位(57.9%)に輝いたことです。
シーズンを通じても44.4%という高水準を維持し、ケビン・デュラントやカイリー・アービングといったスーパースターたちから「ユウタにパスを出せば決めてくれる」という絶大な信頼を得るスペシャリストとして君臨しました。
渡邊選手の成功は、泥臭いディフェンスで出場時間を勝ち取り、その中で巡ってきた数少ないチャンスを確実に仕留めるという、プロフェッショナリズムの象徴です。

新世代:河村勇輝と富永啓生の挑戦
2024年からメンフィス・グリズリーズに加入した河村勇輝選手も、日本人選手の系譜を継いでいます。
2024年11月8日、ワシントン・ウィザーズ戦において、河村選手は待望のNBA初3ポイントシュートを成功させました。
わずか数分の出場時間の中で放ったこの一投は、会場を熱狂の渦に巻き込み、米メディアからも「会場が爆発した」と報じられました。
また、NBA本契約を目指す富永啓生選手は、大学時代(ネブラスカ大)に1試合5本の3ポイントを含む31得点を記録するなど、その卓越したシュート能力を披露しています。
「日本のステフィン・カリー」とも称される彼のレンジの広さは、今後のNBAでの活躍を大いに期待させるものです。

3ポイントシュートが変えたNBAの戦術的構造
これらの記録の背景には、単なる個人の技術向上だけでなく、NBAが組織として歩んできた戦術的転換があります。
なぜこれほどまでに3ポイントが増えたのか、そのメカニズムを理解することで、記録の凄みがより深く分かります。

スペーシングと「重力」の概念
ステフィン・カリーやクレイ・トンプソンのようなシューターがコート上に存在することで、相手ディフェンスは通常よりも広い範囲をカバーすることを強いられます。
これを「スペーシング」と呼びます。
カリーがハーフコートライン付近からシュートを打てる能力を持っているため、ディフェンスは彼をマークするためにゴール下から離れざるを得ません。
この「ディフェンスを引き寄せる力」は「重力(グラビティ)」と定義され、現代の戦術論において中心的な役割を果たしています。
カリーが外にいるだけでゴール下が空き、味方がレイアップを決めやすくなるのです。
期待値の最大化:アナリティクスの勝利
近年のNBAでは、統計学を用いたアナリティクスが全ての意思決定の根拠となっています。
かつては「確実な2点」が尊ばれましたが、計算上は異なります。
- 2ポイントシュート(成功率45%と仮定):期待値 0.9点
- 3ポイントシュート(成功率35%と仮定):期待値 1.05点
成功率が低くても、3ポイントを打つ方が長期的には多くの得点が入るという理論が確立されました。
これにより、効率の悪い「ミドルレンジ(2ポイントのジャンプシュート)」は激減し、ゴール下のシュートか3ポイントシュートのどちらかを狙うスタイルが主流となりました。
2024-25シーズンの平均試投数は1試合37.5本であり、これは10年前の約1.5倍、20年前の約2.5倍に相当します。
もはや3ポイントは「オプション」ではなく、勝利のために必須の「主食」となっているのです。
まとめ:記録の更新が示すバスケットボールの未来
本記事で詳述した数々の記録は、NBAが今まさに歴史的な変革期の最中にあることを示しています。
クレイ・トンプソンの14本、リラードのプレーオフ12本、そしてセルティックスの29本という数字は、現時点での「極致」ですが、これがゴールではありません。
試投数が増え続け、全ポジションの選手が長距離シュートを身につける中、1試合における成功数の記録は今後も更新され続けるでしょう。
特に、ビクター・ウェンバンヤマのような「規格外のサイズとシュート力を兼ね備えた選手」の登場は、3ポイントシュートの概念をさらに拡張させる可能性があります。

また、日本人選手たちの活躍も、このグローバルなトレンドと密接にリンクしています。
八村塁選手や渡邊雄太選手が証明した「精度」と、河村勇輝選手や富永啓生選手が示している「爆発力」は、日本バスケットボールのレベルが世界標準、すなわち「3ポイントシュートで試合を支配する」という現代の流儀に完全に適応していることを物語っています。

3ポイントシュートは、単なる得点手段を超え、勇気、戦術、そして進化の象徴となりました。
これからも1試合の記録が塗り替えられるたびに、私たちはバスケットボールという競技が新たな次元へと到達する瞬間を目撃することになるのです。
